それは世界の全てを記述した本

 ※追記あり 01/31
妄想科學日報様経由で知ったのですが、TRPG*1のルルブ(ルールブック)の表紙について、論争がある*2そうです。発端は「雪だるまの呟き」様のコチラ。計35タイトル並べられたルルブがなかなか壮観です。

通常の書店では手に入りにくいから、と勧められホビーショップに向かったとしましょう。
あなたはまだTRPGに染まってはいませんし、『おおきなオトモダチ』でもありません。
漫画位は読みますし、アニメだってみます。
しかし、あなたはいわゆる『一般人』です。

さぁ、TRPG書籍棚の前につきました。
あなたは、そこにある書籍を…特に表紙が通路側を向いているものを…手にとることができるでしょうか?

 TRPGルールブック、特に基本ルールブックの表紙は、購入時のハードルになっていると思うのですよ

 要するに、すっかりスレてしまった我々TRPG仲間ならともかく、御新規さんにこのアニメ・萌え絵はキツクね? という主張のようです。 
 「一般人」だった頃は前世ほど隔たりある昔の話ですので正直想像するのも困難ですが、まあ一部思春期の多感な若者が手に取り難い表紙の本はあると思います。その手の問題は昔からありまして、よく引き合いに出されるのはビキニアーマーですがいや全裸もありましたよサプリとかじゃ普通に。手に取りにくい&是が非でも購入したいという変な圧力ってなんだか話がずれてきたようですが、既に指摘されてますがそもそも高価でニッチなルルブをジャケ買いする人がいるのかどうか、疑問ではあります。因みに私は最初に買ったルルブがロードス島戦記リプレイ、去年一年間で買ったルルブは「ガープス・マーシャルアーツ」一冊というツッコミ処の多いTRPG人生を送っているので、そもそも元から発言する資格が無いような気もしますが。
 ルルブとは、マニュアルであると同時に世界の法則を記した魔法の書でもある訳で、それがあんまりチャラチャラしていると雰囲気を壊すと言う主張はある程度理解できます。
 さてこの問題、多くの視点から言及されております。「ブレーキをかけながらアクセルを踏み込む」様のコチラでまとめられておりますが、ジェンダーやセクハラ論ならともかく、その他の立場から論じるなら結局の所、

なんの客観指標もなしに議論可能な話題ではないというのは確かなところ。

と仰る妄想科學日報様の指摘が有効であるでしょう。といっても、そんな指標を提出するのはかなり難しいでしょうが。2種類のカバーを用意して売れ行きを比べる、なんてことができるほど恵まれた業界でもなさそうですし。
 個人的にはむしろ、アニメ絵や萌え絵に対して感じる違和感、嫌悪感そのものを、もう少し疑った方が良いと思っています。かつてルナルサーガシリーズを「何か絵がアニメっぽい」と忌避していた私が言って良い台詞じゃありませんが*3、自戒も含めて。元々アニメ・萌え絵化は今やジャンルをまたいだ現象で、決定打は例の小畑健版「人間失格」でしょう。で、ぶっちゃけた話、私的にあり得ないんですよ、伊豆の踊子ならともかく。でも売れた。と言うことは、私と感性を大きく違えたターゲット層が存在しているということです。
 純文学に対するイメージがここまで違うなら、アニメ・萌え絵を忌避する「私の感覚」も疑ってしかるべきではないか。少なくとも安易に一般化するのは危険でしょう。この辺、ジェネレーションギャップを加味するのは論としては難しい上に筋悪かもですが、いいおっさんになってしまった我々と次代を担うネクストなジェネレーションの方々との感覚の違いは、もう少し考慮した方が良いかもしれません。
 
 
 と言うことで、この前買った中で一番恥ずかしかった本をご紹介します。リプレイですが。※肌色注意。

 表紙も著者もタイトルも恥ずかしいですね。
 内容は、藤澤(ぺらぺらーず)さなえGMイラストレーター・セッションと、「デモンパラサイト」原案・監修 北沢(兄貴SW2.0)慶GMのクロスオーバー・リプレイ。何気に後書きが北沢慶藤澤さなえ・力造3人のインタビュー対談でお値打ちです。

 イラストレーター・セッションは「デーモン・アゲイン!」に次いで2度目。前回「着替えを覗く!」と行動宣告して女性陣に軽く引かれてた緒方剛志(因みに表紙の犯人はコイツ)ですが、今回も良い感じにおっさんです。おっさんと言えば、ぺらぺらーずの時はプレイヤーに散々セクハラ攻撃を受けていた(?)藤澤さなえが開き直って「テーマは全裸!」発言しているところも見所の一つでしょうか(そしてタイトルはコイツの仕業)。しかし、デモンパラサイトのテーマが「全裸」「変身」「焼肉」だったとは思いませんでした。非常に解りやすい説明です。
 個人的には、2本目のジャイアント白田ギガンテス白川がギャル曽根コギャルのナツコに負けて悪魔化を受け入れる話がお薦め。すげえシナリオ。
 前回少々暴走気味に見えた緒方剛志が、デモンパラサイトだと同じ事をしてもストーリーの展開に貢献できてしまう点とか、ゲームの違いが反映していて面白かったです。イラストレーター・セッションだとイラストがゴージャスなのもいいですね。どうでも良いですけど83pおそらく槻城ゆう子画伯のイラストだと思うんですが、足長過ぎてヘソがどこにあるか解りません。既にデモニック・フォームしてるということなんでしょうか?


追記 2009/01/31
 ちょっと補足。ウォーロックからの古参ユーザーが違和感、と言うか嫌悪感を抱かなかったら、そっちの方がおかしいとは思うんですよ。最初はむしろ大人の趣味的なイメージもありましたし。テーブルトークを再び大人の手に取りもどそう、という意志がこの論争の片方のモチベーションではないかと思っております。
 同時に、古参ユーザーは全盛期だけでなく暗黒期もくぐり抜けて今に至っているので、アニメ・萌え絵が最近のジャンル復興の起爆剤になった側面を無視できない。いまある議論のねじれ、感じるある種のもどかしさは、その辺の状況が関係していると見ました。
 いずれにせよ、参入障壁の話をするなら「我々」の常識を押し付けてもしょうがない――角度や言葉は違え、皆さんが仰っておいでの結論を、私もまた結論にしたいと思います。

*1:略称テーブルトーク。要するにコンピューターの代わりを人間がやるRPGです。

*2:リンク先は「きまぐれTRPGニュース」様

*3:その後改心して、特にリプレイ「月に至る子」編は心の一冊(3冊)となっております。お気に入りはドワーフメイドボクサーのヴェロニテ。