美味しんぼ 残り物使い回し疑惑 〜再会の丼編〜

 えー、タイトルは単に酔っぱらいの思いつきです。日曜だし、と言う訳で昼間っから全開バリバリ、飲んでます。いやぁ、お天道様の下で飲むビールはどうしてこんなに旨いんでしょうねぇ。思わず人生が変わってしまいそうです。
 さて。今月初め美味しんぼを検証してみる。-みつどん曇天日記にて捜索していた美味しんぼ9巻、発見しました。早速添加物批判エントリーを、と思ったんですが。まあせっかく買ったんだしと読み返していて、面白い事に気がつきました。あまりお待たせするのも何ですが、「検索単語:美味しんぼ」でいらっしゃる方も多いですし、この際[美味しんぼ]タグを作って、当ブログのメインテーマにしてしまおうと思います。*1

美味しんぼ9巻の構成

表紙のお漬け物、凄く旨そうです。まずは目次をご覧下さい。
  

 1 ハンバーガーの要素
 2 食べない理由
 3 再会の丼
 4 黒い刺身
 5 5年目のパスタ
 6 日米味決戦
 7 最高の肉
 8 新妻の手料理
  

 それぞれの詳細は実際にマン喫かブクオフで読んで頂くかこちらのサイトで確認して頂くとして。実はこの巻、有名エピソード満載でお得です。1は美食倶楽部を辞めてハンバーガーショップを開く愚か者うっかりさんの話ですし、2は初読時(初版87年!)以来、一度でいいから食べてみたいと憧れている(進行形)仏跳牆の話です。

仏跳牆(フォティオチャン)とは、 高級海産乾物類、鶏や中国ハムなどの肉類、野菜や漢方食材など、数十種もの食材をスープとともに壷に入れて密封し、長時間蒸して仕上げた最高級スープ料理のひとつ。

仏跳牆(フォティオチャン)という名は、「そのあまりの美味さゆえ、香りを嗅いだ僧侶までもが牆(垣根)を跳び越えて食べに来る」ことに由来しているという。

 引用:なんかロハス系のサイト。因みに、東海林さだおに依りますと語源にはもう一種類あるそうです。「飲んだ坊主が精力付きすぎて矢も立ても堪らなくなり、塀を跳び越えて街に繰り出した」葷酒山門に入るを禁ず、ですな。
 他にも、すじ肉牛丼の3話、アニメでベジータ(ラインハルトでも可)が声を当てた5話や私が探していた6話、「俺これから親父を殺すよぉ」と世知辛い今なら通報必至な電話相談が掛かってきて、対応した栗田さんが警察にしょっ引かれるという超展開な7話(因みにテーマは「牛肉は熟成した方が旨い」。スーパーで市販品を買う身にとっては実にトリビアルな知識ですが、聞いた事ある方も多いのでは?)、忙しい主婦が電子レンジを多用している事に無理くりケチを付ける8話(ツッコミ処多いです。その内エントリーにしよっと)と実にお買い得な巻でした。おっと、4話は中国残留孤児が黒い刺身(ヒント:「本当は褐色なんだけど子供の目には黒くうつったんだね」ありかそんなの?)を食べて昔を思い出す話です。何でも食べ物で解決するのは食べ物マンガの原則ですが、まあ喰いモノが昔の記憶と結びついているというのはそんなに無理筋でもありませんね。まともな分つまらないという話ですが。
 で。読み返していて気付いたんですが、美味しんぼ9巻はフォロー構成になってるんですね。
 先ず最初の1話にこんな台詞があります。

「おまえは才能があるから、美食の真髄を究めることのできる料理人になれると見込んでいたのに!!」
「そのおまえが、味覚音痴アメリカ人の食べる あの忌まわしいハンバーガーを!!」

 炸裂するツンデレ。誰のお言葉かもうお解りですね。更にこんな会話が

「これは脂くさいですねえ。」
「脂くさいと言うより、スジ肉の部分のにおいだね。」
「ひき肉にしてしまうと分からないから、程度の低い肉を使ってるのね。」

 上からうっかりさん、銅鑼息子、栗田さんの会話。そんなにバーガーキングを責めなくても……。おまけに

冷蔵庫ですよ。牛の肉はと殺してから、二週間ほど熟成させると美味しくなるんです。

 お解りでしょうか。
 9巻では、先ず1話において「アメリカ人」と「スジ肉」をこき下ろしています(ひでぇ)。
 しかし、3話のテーマは「スジ肉でも手をかければこんなに美味しくなる」。これは1話で貶めたスジ肉に対するフォローと言って言えない事はありません。勿論、ネタ部分を流用スピンオフしていると考える事もできますが。
 より直裁なのが私が探していた6話で、内容は味覚音痴アメリカ人に味が分かるかと憤る人に、「実験」でむしろ日本人の方が旨みが分からない、と証明してみせる話です。見事なフォロー、もしくは使い回しですね。7話に関しては言うまでもありません。
 以下は憶測ですが。ネットが未発達な頃でも、雑誌に連載していれば読者から反響が寄せられてきます。過激な事を言えば当然、その部分に大きな反応が返って来るでしょう。
 思うに。1話連載時に上記の部分について反論(なりなんなり)が寄せられたんじゃないでしょうか。で、「これは使える」とネームを切ったんではなかろうかと。「スジ肉はこうすれば美味しく食べられます」「よし頂き!」見たいに。あるいは「本当にアメリカ人は味覚音痴ですね。バーガーとチキン喰ってピザw」「何言ってやがる(自分の事は棚に上げた)。日本にこんな偏見が広がったらマズイ!差別は絶対いけないんだ!」とか。一応言っておきますが、この人の建前をないがしろにしない点は、素直に評価しています。差別はダメとか、日中友好とか、男女平等とかね。子供の頃読んだ「人種差別か。最低だな」という谷村部長の地味な一言には結構影響されてます。子供にはこう言うのが効くんですよ。ただ、言ってることとやってる事が違うのは頂けないですが。ま、その点は今後ネチネチ指摘していきたいと思います。
 と言う訳で。美味しんぼを単行本で読むとこう言う余得があるよ、と言うお話でした!……え、牛丼はまだか? すき家吉牛でも行けば?

みつ丼*2レシピ 牛みつ丼。

 と言うのは勿論冗談で。気がつくともう夕刻。そろそろ眠くなってきたので潰れる前に前回でお約束した「再会の丼」牛すじ丼のみつどん風レシピです。
 と、その前に。美味しんぼに書いてある本物実際のレシピを確認しましょう。

「問題は料理の仕方なんです。スジ肉を水から煮て、煮上がったら、その煮汁を捨てる」
「それに水と日本酒とショウガと醤油を入れて、もう1度煮ます。焦げ付かないようにごく弱火でまる二日、できたら三日間煮込むと文句なしです」
「そんな簡単なことでスジ肉がこんない美味しいものになるの」
「弱火で煮続けるのはとても手間がかかります。作る人の根気と誠意が必要です」

 強調みつどん。因みに具は肉とミツバだけだそうです。表紙の牛丼には思いっきり玉ねぎが入っていますが。それにしても、流石に美味しんぼ。手間と誠意がイヤ程掛かりますね。
 まあ、そうやってできあがった牛丼は勿論美味しいんでしょうが。三日も牛丼にかけてられるかお忙しい皆様向けに、小一時間でできてしまうレシピをお伝えします。ええ、圧力鍋です。

 1 牛すじを下煮します。固まりのママぐらぐら言わせてザルにとればOK。
 2 牛すじを下煮します。タイポじゃないですよ? 二回目の下煮です。圧力鍋に固まりスジ肉をぶち込んで適当に臭み消しを添えて下さい。ネギの青い所とか生姜、にんにくなど。で圧力かけて10分位シューシュー言わして下さい。ああ、お水とお酒をひたひたさせないと凄い事になりますんで注意。
 3 圧力下がったら、ザルにとって(下煮のスープはかなり上品な味です。あくと脂を掬って使って下さい。)、お水で洗って一口大に切ります。この段階ではまだクニクニしてるでしょう。で、水・日本酒・醤油で本格的に煮ます。砂糖を加えると味に奥行きが出る上、諸勢力にケンカが売れて愉快です。この段階で玉ねぎを入れると煮溶けるのと甘くなるので注意。その方が良いという人はご存分に。私は半分だけ入れました。
 4 10分もシュー言わせたら、圧力が下がるのを待って、フタを取り弱火でぐつぐつ言わせて下さい。気が長い人は20分くらい?焦げないように気をつけて下さいね。
 5 仕上げ。ここがポイントです。フライパンで、残った玉ねぎとお肉を炒め合わせます。シンナリした頃あいでタレとみりんで艶を出し、味を調整します。圧力鍋レシピはどうしても水っぽくなりがちですので、この一手間が重要です。またこの方法だと玉ねぎの食感も楽しめます。
 6 できあがり。ご飯を炊いてない事に気付いて絶望しないように。紅ショウガと七味、三つ葉を散らして、完成です。 


 見えないですが、ご飯には麦を混ぜてみました。玉ねぎの色出しがちょっと甘かったですが、まずまずの出来です。ね。
 普通の牛丼と違って、食感が柔らかいのが特徴です。掻っ込むには、普通に作るよりむしろこっちの方が相応しく思います。汁抜き派の私としてはこっちの方を贔屓したいですね。
 ああ、小さく見えますが実際はちゃんと丼です。 

 撮影の一瞬の隙を逃さず箸を瞬間移動させているのは母上様。小鉢の中身は茶色いのがスジと一緒に煮た厚揚げ、他はワカメとキュウリと煮干しの酢の物。焼き魚。今月一番の豪華メニューですがぶっちゃけ冷蔵庫の残り物一掃です。朝からげっぷが出ました。
 

 美味しんぼの牛すじ牛丼は

見てくれはよくない、かざりはない、だが 中身は真っ当、嘘偽りはねぇ……

 んだそうです。私の牛みつ丼も、見てくれは決して良くないですし(そうか?)飾りもありません(三つ葉は?)。ですが、中身は真っ当、嘘偽りなく「楽したい」という気持ちで溢れています。
 圧力かけて煮込んでいる間はハイクかブクマでもして有意義にお使い下さい。夜のウチに作っておけば、重すぎる朝食として家人の顰蹙を買う事必定からしっかりと一日を乗り切る元気が出ます。コラーゲンもたっぷり(露骨な検索用フレーズ)のどこを切っても反マクロビなみつ丼シリーズ(今決めた)、今後もご期待下さいね。
 ああ、そうそう。次回は「検証!パンズが変わるとハンバーガーの味が変わる?(仮題)」をお送りします。お楽しみに!! このブログはどこに向かってるんだろう……。

*1:酔っぱらいの言うことなんで気にしないで下さい。

*2:命名:どらねこさん。親子丼ともう一つは何にしましょうね。