「森」は生きている。生きているから、息も吐く。

 ちょっと前(12日)になりますがさつきのブログ「科学と認識」で興味深いエントリーが上がっていました。森林は二酸化炭素を吸収しない 以下、いつものように中略は引用者。

地球温暖化防止にからめて、二酸化炭素削減における森林の効用について、一部に誤解が生じているようだ。ここで指摘しておきたい誤解は、次の二点。

1)森林は二酸化炭素を吸収している。
2)木材などのバイオマスを燃料として用いても二酸化炭素を排出するので、人為起原二酸化炭素排出の削減には役立たない。

 はい誤解してました。特に2)についてはずっと不思議に思っていたのですが*1、御陰様でスッキリしました。ありがとうございます。
 目から鱗だったのが次の部分。

確かに、木材を燃やせば二酸化炭素が排出される。しかしそれは、燃やさずとも最終的に二酸化炭素を排出するにきまっている存在なのである。

 空中の二酸化炭素を取り込みながら成長する木材は、伐採されて燃やされればモチロン、天寿を全うしたとしても、違う方のもやしで「かもすぞぉ!」されてやっぱり二酸化炭素は空中に排出される、と。言われてみればその通りです。いや、頭ではわかっていたんですが(ホントデスヨ?)。

誤解1)について
 生きている樹木は、一つの個体に着目する限り、確かに二酸化炭素を吸収している。しかし、土壌まで含めた森林全体を一つの単位要素として見れば、二酸化炭素を吸収している訳ではない。

 話を分かりやすくするために、長期に渡って手つかずで、極相に達して安定している森林を想定しよう。このような森林では、樹木の成長と枯死がバランスしている。樹木は光合成によって成長することで二酸化炭素を吸収し、有機炭素に変えて貯蔵する。一方、落葉や、寿命を迎えて枯死した有機体は、土壌中で微生物によって分解されて、再び二酸化炭素へ還る。
 (中略)つまり、「安定な森林」は、二酸化炭素を吸収も放出もしないで、単にバッファーしているだけということになる。

 どんなに大森林が広がっていても、それで大気中の二酸化炭素は減らせないよ、ということです。それじゃ、腐海森なんて焼き尽くせ!無くしちゃって良いかというと、当然そんなことはないです。

同じ理由から、「成長しつつある森林」は二酸化炭素を吸収することになるし、逆に、「縮小しつつある森林」は二酸化炭素を放出することになる。全地球的には、主に林業によって森林は縮小を続けているが、その分だけ、二酸化炭素を放出していることになるのである。

 例えば、何もない所に木を一本植えたとして。その木が生長すれば、その分大気から二酸化炭素減少します。この木はやがて枯死して取り込んだ二酸化炭素を排出しますが、そこにもう一本木を植え、かもされて排出した最初の木の二酸化炭素を全部吸収させれば、空気中の二酸化炭素変化しません。トータルでは一本分、マイナスになります。
 森で行われている二酸化炭素のやりとりを、思いっ切り単純化するとおおむねそんな感じなのではないでしょうか? 結局、「森を増やせば空気中の二酸化炭素は減少する。今ある森を切り倒せば、その分二酸化炭素の排出量は増える」という、ひどく当たり前の結論になりますね。
 で、私が誤解していたほう。

誤解2)について
 有機体が微生物によって分解され、二酸化炭素を放出するということは、「ゆっくりと燃える」ということなのだから、いっそのこと、きちんとした管理下で燃やして、そこからエネルギーを取り出して役立てた方が良いということになる。
(中略)有効に燃やしてエネルギーを取り出し、その分化石燃料の消費を減らせば、人為起原の二酸化炭素排出の削減に繋がる。冒頭に掲げた誤解2)は、炭素循環のシステムの中で、人為起原の二酸化炭素と、自然が排出する二酸化炭素を区別せずに考察した結果であろう。

 先に引用したように、木材にしろ作物にしろ「燃やさずとも最終的に二酸化炭素を排出するにきまっている存在」なので、いずれ必ず二酸化炭素を排出する。だったら無駄にかもさせてないで、いっそ燃やしてエネルギーにすれば化石燃料を節約できるっしょ? と言う発想です。
 バイオマスを燃やして排出する二酸化炭素は、どうせほっといても排出する予定の二酸化炭素を前借りしているようなモノですね。トータルで大気中の二酸化炭素は変化しません。化石燃料は超長期にわたって二酸化炭素の貯蔵が可能な形態なので、節約できれば大気中の二酸化炭素を増加させない事が出来ます。
 排出される二酸化炭素の「量」だけでなく「由来」にも着目しなければいけない、と言うことのようです。
 
 
 以上、主に自分の理解の整理とチェックのため、メモランダム的に書いてみました。
 「不利益を被らない利益」は目に付きにくいモノです。衛生設備しかり治安しかり。私が誤解していたのも、恐らくそれが原因だったのでしょう。
 ほら、日本は水と安全と森はタダだから。
 ……と言うイイワケを考えてみたんですが、どうでしょうか。誤解なさっていた方がもしいらっしゃったら、どうぞお使い下さい。自己責任で。

*1:収穫・運搬の分排出増えるんじゃネーノ? と。お恥ずかしい……