ASIOSの本『謎解き 超常現象』

 マッハで購入し、とっくに読み終わってたんですが。今まで延び延びになっていた『謎解き 超常現象』の書評、ってゆうか解説です。

謎解き超常現象

謎解き超常現象

懐疑主義者の団体「ASIOS」が出した本、と言った方が通りが良いかもしれませんね。

懐疑主義について

最初にASIOSの説明から。

ASIOS(アシオス)とは、「Association for Skeptical Investigation of Supernatural」の頭文字をとった略称で、日本語に訳すと「超常現象の懐疑的調査のための会」です。
当会の主な目的は、その名のとおり、超常現象を懐疑的に調査していくことにあります。懐疑とは、本当にそれが事実であるのか、注意深く、客観的に立証を求めていく態度のことです。「懐疑」と「否定」は異なります。
(中略)
メンバーは、超常現象に関する話題が好きで、事実や真相に強い興味があり、否定のための否定が好きではない、手間をかけた調査を一定のレベル以上で行うことができる、「もしかしたら本当かもしれない不思議な事例」の発掘をしたい、「偽物の可能性が高いとされる事例でも、どのように、どのくらい偽りなのか」も調査したい、という立場にたつ少数の人材によって構成されています。
(中略)
なお、当会は「超常現象が好きなメンバーが集まり、真相を追究していく」ことを第一の目的としていますから、疑似科学批判を行うような啓蒙を目的とした団体ではありません。 しかし、年少者向けに懐疑的な考え方や調査方法を広めていく、いわゆる「ジュニア・スケプティック」(Junior Skeptic)には関心を持っていますので、それについては会の内部に専用の啓蒙部門を用意し、普及活動を行います。

ASIOS公式サイトより引用。超常現象に興味がある方は必見です。特に錯視を体感できるコーナー心霊写真を再現してみせるコーナーは本気でお薦めします。動画や関連書の書評、リンクが充実しているのも素晴らしいですね。あなたの知らない世界にこれからずぶずぶはまってやろうという奇特なお人には、最適な入門サイトとなるでしょう。
 さて。ASIOS、と言うより懐疑主義者に関して誤解されがちなのが次の二点です。
 

 1、超常現象の「否定派」ではありません。
  懐疑主義者に相反するのがいわゆる「ビリーバー」なので誤解を招きがちですが。本来肯定派・否定派という枠組みでは収まらないのが懐疑主義者です。当然、肯定派に近い懐疑主義者も存在します。懐疑主義者が忌み嫌うのは「最初から結論ありきで、ろくに調査もせず頭ごなしに」肯定したり否定したりする態度であって、肯定あるいは否定する事自体は単に結論(それも現時点での)に過ぎません。むろん、保留もあり得ます。


 2、批判は本義ではありません。
 引用部にもあるように、ASIOSは「真相を追究していくことを第一の目的」としているので、決して「 批判を行うような啓蒙を目的とした団体」ではありません。と学会も同様でしょうが。もっとも、当然ながらこの事はニセ科学や非合理に寛容である事を示しません。真相に至る道にゴミが落ちていたら、避けるより拾った方が長い目で見て合理的です。ゴミを撒き散らす輩がいたら、時に注意して止めさせるかもしれません。ただ、それはあくまで「真相に至る」と言う目的を果たす為であって、そのこと自体が目的ではない、と言う事です。更に、これまた当たり前の事ですが、超常現象を離れた場でニセ科学や非合理にどう対処するかはまた別の話です。


 サイトのFAQにかなり突っ込んだ解説がありますので是非参照して下さい。


謎解き超常現象の謎を解く

 中見出しは単に書きたかっただけですが、他意はあったりします。
 この本には42の超常現象が取り上げられています。取り上げ方ですが、「伝説」と「真相」の二つのパートから成っていて、各超常現象を先ず「伝説」パートで紹介し、「真相」パートで調査結果を明らかにする、という構成を取っています。
 で。この時点でピンと来た方もいらっしゃると思うんですがこの構成、先行図書、というか類書の『トンデモ超常現象99の真相』『新・トンデモ超常現象56の真相』*1と全く同じなんですね。

トンデモ超常現象99の真相 (宝島社文庫)

トンデモ超常現象99の真相 (宝島社文庫)

 この二冊は、超常現象に興味のある方必携の基本図書で(私も持ってます)、特に新の方は項目が少ない分丁寧に書かれ、現地取材レポートもあって超お薦めです。「幻覚・幻聴」「うつろ舟」「メアリー・セレスト号事件」「瑞洋丸が引き上げたニューネッシー」が個人的に参考になりましたが、とりわけ最後のは子供の頃学研ひみつシリーズ(事典シリーズ?)かなんかで知って以来ずうう〜〜〜〜〜〜〜っと不思議に思っていたので、読んで真相を知った時にはスッキリしすぎて気が遠くなりました。あの釣り下げられたぼろぼろのネッシーをご存じの方、真相を知りたくはないですか?
 さて。超常現象ファン必携、と言う事はとーぜん『謎解き超常現象』を買おうかという知的好奇心旺盛なナイス・ガイは、既にこの2冊を持っている事と思います。
 なので、私がそうだったからあなたもそうでしょうが、気になるのはズバリ! 超常現象のダブりでしょう。元々、公式ブログによると謎解き〜は

約300ページの中で42の超常現象を扱っています。こういった謎解き本を読むのは初めてだという方向けに定番のものも扱っている一方、近年話題になったWEB動画なども扱っています。

 というコンセプトらしく、ダブりを恐れていないようです。具体的に言うと、42ある超常現象のうち、99の真相で取り上げられているのが「御船千鶴子千里眼」「フィラデルフィア実験」等9つ、56の真相で「磁石人間」「髑髏水晶」の2つ計11の項目がダブってます
 この数をどう受け取るかは人に依る所でしょうが。執筆者が違い、当然内容も変わっていますので、私はそれほどは気になりませんでした。もっとも「ジョー・マクモニーグルの透視」に関しては

ジョー・マクモニーグルの透視にいたっては、日本テレビのスタッフによる明白な捏造である。僕はそれを実際に現地まで行って検証し、すでに2冊の本に書いている。

 と、山本先生がブログで仰っているように著者が同じで、内容も私が持っている2冊の内の一冊『と学会年鑑BRAUN』に比べやや薄い印象を持ちました。ビルの色をスタッフが色調を変えて誤魔化した点など、やっぱりカラー写真付きの年鑑の方がインパクトあります。また、「ナターシャ・デムキナの透視」に関しても山本弘のSF秘密基地:超能力少女ナターシャの実験に立ち会ったゾの巻で顛末がより詳細に書かれています。美少女と言わなかった辺り自重しましたね。もっとも、それを言ったら「神の手」に関してだってかめぞさんとこのPSJ渋谷研究所X:「神の手」まとめ:日本での初出、「受け取ったらどうする?」などの方が各種画像がいっぱいあって分かり易いですが。
 まあ、そもそもASIOSの活動を本にしたのがこの本で、つまりぶっちゃけサイトの一番美味しい部分が本になっているので、ダブリ云々言うなら私的にこの本のキモである心霊写真関連は全部既読だったんですが。まあ、言ってみれば雑誌連載していた読み物の単行本を買った、と言った感覚でしょうか。単行本派なので文句はないです。「書き下ろし」も多いですしね。

目次

 さて、内容ですが……この手の本は何を書いてもネタバレですよね?仕方ないので目次を載せておきます。ティン!ときた項目があったらググれ購入してはいかがでしょうか?

本書で取り上げられている題材は次の通り。

【第1章】 超能力の真相
1. 御船千鶴子千里眼
2. 不食の聖者、長南年恵
3. ゲイル・セントジョーン
4. ジョー・マクモニーグル
5. ナターシャ・デムキナ
6. 誰でもできる「磁石人間」
7. アポロ14号の超能力実験

【第2章】 超古代文明の真相
8. クリスタル・スカルの謎
9. バールベックの巨石
10. 伝説の大陸「アトランティス
11. ムー大陸の真相を追う
12. 与那国島海底遺跡
13. ヴォイニッチ手稿の謎

【第3章】 超自然現象、怪奇現象、UMA、陰謀論の真相
14. チェーンメール「神の手雲」
15. ウェブで話題の心霊動画
16. 心霊写真の謎を暴く
17. オオカミ少女、アマラとカマラ
18. モントーク・モンスターの正体
19. 謎の生物、スカイフィッシュ
20. 本当にいたUMA
21. 聖痕現象の真実を追う
22. 地震雲は信用できるか
23. ファフロツキーズは本物か
24. フィラデルフィア実験
25. 911陰謀論の真相

【第4章】 UFO事件の真相
26. ロズウェル事件の真相を追う
27. MJ-12文書の真実
28. オバマ大統領就任式に現れたUFO
29. メキシコシティの巨大UFO
30. WTCに現れたUFO
31. メキシコ上空に現れたUFO群

【第5章】 エイリアン事件の真相
32. 宇宙人解剖フィルムの正体
33. エイリアン・アブダクション
34. メン・イン・ブラックの正体
35. ウンモ事件
36. 衝撃映像、隕石から宇宙人が!
37. 月の裏側にいたサンタクロース

【第6章】 大予言の真相
38. ジュセリーノの予言のウソ
39. 人類滅亡を予告するマヤ暦
40. フォトン・ベルトとは何なのか?
41. ニュートン・コード
42. アインシュタインの予言

 因みに、引用符で囲んであるのは伊達じゃなくて山本弘先生のブログからの引用です。内容についてより詳細に知りたい方は、そちらも参照下さい。

*1:新装版として『新・トンデモ超常現象60の真相』が出ています。フラットウッズモンスターなど項目が4つ増えてるので、購入されるならこちらを。