ホメオパシーってなあに?

ホメオパシーとは?

 ホメオパシーとは、一言で言うなら代替医療(効果が公的に認められていない医療法)です。
 ガンバって説明すると

主に「同種療法」と訳される代替医療の一つ。19世紀の初めドイツ人医師サミュエル・ハーネマンにより創始。「症状を緩和するにはその症状に類似した作用をもたらす物質が有効である」という「類似の法則」に基づき、各症状に合わせた「レメディ」を処方する投薬療法。
特徴は希釈(dilution)と振とう(sucussion)。
「類似の法則」によって選定された物質は「物質でなくなるまで」希釈され(実際、もとの分子が含まれないまでに薄められる)、その際激しく振とうされる。この過程で水に物質の「エネルギー」(情報とされる事もある)が転写され、それが患者の生命エネルギーを励起させる、と説明される。
 

科学的に評価するなら、レメディ自体は元となる物質が何であれ単なる「砂糖玉」*1であるとしか言いようがない。疫学的調査においても、プラシーボ効果以上の結果は得られていない。


ホメオパシーに対する批判は古くからなされ、古典的なニセ科学の一つとも見なされている。

 ……ふう。まあこんな所でしょうか。
引用符で囲ってはありますが、この説明は私みつどんが自作したものです。Wikipediaの当該項目と余所様のエントリーをパクッた参考にしました。
さて。
出来るだけ主観を交えずに簡素にまとめてみましたが、この説明じゃネタ分が足りないかえって解りにくいよ! という脳内妄想ありがたい読者様の為に、いつもの調子で補足的に説明し直してみます。以下、私の個人的意見が混ざっていますのでご注意下さい。

万能猫耳ほめおぱちぃ(homeopathy)

  • 「homeopathy」の呼び方。

同種療法と言う訳語は結構振とう浸透してますが、一般にはホメオパシーで通じます。一部「ホメオパチィ」と呼ぶ人もいるようですが(ドイツ語読み?)、ウチではより一般的なパシィで統一しようと思います。じゃあ何だよその小見出しは。
 

 ホメオパシー創設当時は近代医療確立前で、細菌も見つかっていない公衆衛生なんじゃそりゃな状況でした。基本的にみんな手探りで治療していた訳で、要するにホメオパシーもその手探りの一つです。
そんな時代背景を鑑みるに、ハーネマン先生は結構大したお人かもしれません。もっとも、その事と現代でもなお彼の主張が通用するかどうかは別の問題ですが*2。一部彼の主張を原理主義的に受け入れているお方がいらっしゃるようなので一応。
参考:呪術教団化するホメオパシー:地下生活者の手遊び  
 

  • マリオ類似の法則

 ホメオパシーの中核を成す理論です。平たく言うと「その症状がでる物を呑めば、症状が治まる」の法則。これ、例えるなら「涙を止める為に玉ねぎ汁を薄めて呑む」ってことで、もっと直截に「下痢を治すのに下剤を飲む」と例える方もいらっしゃいますが*3、まあぶっちゃけ症状悪化すんじゃね?と思ってしまいますよね普通。
 この逆転の発想を、ハーネマン先生はマラリアの症状とキニーネ一気呑みした時の症状が似てる事から思い付いたらしいです。これは推測ですが、同時期にジェンナーによって種痘が確立している事も影響してるかも知れません。毒をもって毒を、という感覚ですね。
 

  • 希釈(dilution)と振とう(sucussion)

 とは言え、毒をそのまま飲んだら普通に死にますから無害化する必要があります。ここで
「薄めちまおう、むしろ薄めろ、薄い方が効くんだ!
ともう一つ発想を逆転させてしまう所がハーネマン先生の偉大なところでしょう理解は困難ですが。言ってみれば「毒をもって毒を制すがその毒は影も形もない」。
 とにかく、ホメオパシーによると元の物質は薄めれば薄めるほど効果が上がるそうです。実際、あまり薄めない元の物質が濃く残っているレメディは誰でも使えるのに対し、徹底的に希釈した元の物質が一分子もないような状態のレメディは「効果が強いから」専門のホメオパスでなければ処方出来ないんだそうです。
参考:ホメオパシー治療によるヒ素中毒:NATROMの日記
 

 もっとも、使いやすい一般的なレメディでさえ100倍に薄める行程を30回ほど繰り返すそうで(今100×30で計算した君。100の30乗だから間違えないように)、それで十分元の物質が分子の欠片も残ってない状態になりそうです。ですので、もとの物質が例えばトリカブト(割と一般的なレメディ。突然の発熱などに用いる)だったりしても、まあ無害です。*4
 薬効成分が無いのに、いやむしろ無い方が効くと言う主張は当たり前ですが薬学的にって言うか、常識的に考えてあり得ません。
 そこで「振とう(容器に激しく打ち付けるようにシェイクする事)」が意味を持つ、
 「希釈する際に行われる振とうによって水に元の物質に由来する何らかのエネルギー(あるいは情報)が転写され増幅していく、だからレメディには現代科学では分析できない何らかの「薬効」が宿っている」
 ……とホメオパシーサイドは主張します。

  • 科学的に評価する

 上記の主張は前提に超科学を含んでいて、科学で取り扱うとややこしい事になりますが、薬効それ自体は科学で検証する事が可能です。つまり、作用機序については取り敢えず置いておいて、薬効があるという主張について先ず疫学的手法で調べて見よう、と言う事です。
結論から言うなら、ホメオパシーの「薬効」は偽薬と変わりませんでした。通常それは、効かないと見なされます。
 ホメオパシーは、おまじない程度にしか(あるいはただの砂糖玉と同じくらいしか)効きません。
参考:ホメオパシーは「効果が確かめられていない」方法ですらない - Skepticism is beautiful


 ホメオパシーの薬効に関しては、プラシーボ効果や体験の一般化、科学で言う「効く」の意味など小難しい話題に事欠かない所なので、稿を改めて取り上げようと思います。取り敢えずここでは、「ホメオパシーは何故効くのか」と効くことを前提に解釈を積み上げていっても仕方ない、そもそも前提から間違えている、と指摘しておきましょう。リンゴがオレンジ色である理由をどんなにそれっぽく説明できたって、リンゴがオレンジ色になる訳ではありませんよね。それと同じで、効く理由をいくつ積み上げた所で効くようにはなりません。説明=証明ではないので、勘違いしないよう、お互いに気をつけましょう。
 さて、一応フォローしておくと、微量の毒物が生命エネルギー(?)を励起させる、と言う作用機序の発想それ自体は必ずしもオカシイという訳でも無いです。Wikipediaにも書かれてましたが、ちょっとずつアレルゲンを与えて慣れさせる減感作療法などは、発想がホメオパシーと同根ですがちゃんと科学的に効果が認められ、治療法の一つとなってますね。
 ただ、先も書いたようにホメオパシーの場合、他の療法と違って微量の毒物がそもそも存在しません。ですので、「現代の科学では分析できない」ホニャララが、「生命エネルギー」という実に曖昧な対象に働きかける、とホメオパシーの作用機序を「説明」し、レメディのこの成分が効く、とはホメオパスは決して主張しません。薬効という考え方ではホメオパシーは理解できない、とハッキリ仰るホメオパスの方もいます。
 逆に言うと、何が何にどんな作用をもたらすのか、形をもって示すことが出来ないと言う事です。少なくとも、科学的に分析できる対象としては。 


 まとめますね。
 科学的に評価するなら、ホメオパシーは作用機序を具体的に示せず、疫学的には効かない事がほぼ証明されている療法、です。


ホメオパシーに対する批判は、古くから行われています。例えば、スケプティックの分野では古典的名著と呼ばれているマーティン・ガードナーの『奇妙な論理』では、ホメオパシーが医療の4大カルトの一つとして取り上げられています。
ネットにおいては「ニセ科学批判」にコミットする方々によって、度々批判的に取り上げられています。他人事のように語っていますが、私が今、まさにそれ
 同じ批判と言ってもホメオパシーに対する態度には批判者の間でかなり濃淡があって、類似の法則や超稀釈をトンデモとして愛でる立場の人もいれば、人殺しと激しく弾劾する人までいらっしゃいます。まあ人それぞれです。
 ただ、一つ批判者の間でコンセンサスが取れているのは、ホメオパシーその物(レメディの投薬)より、むしろホメオパシーやその団体を信じることによって起こる副次的な影響の方が問題が大きい、という見解です。具体的には科学や医療を忌避する事、これが最も大きな問題であると私(達)は考えます。
 レメディは基本的に無害ですし、躍起になって批判する事もないだろうと私なんかは考えますが(これは人それぞれ)、しかしレメディを過信して他の療法を受けない、場合によっては批判するとなると話が変わります。通常の医療を施せば助かったのに、ホメオパシーに頼ったばかりに手遅れになる……そう言う事態が強く危惧されるからです。
そして実際、その「危惧」は最悪の形で顕現してしまっています――ホメオパスである両親によって治療の機会を閉ざされた生後九ヶ月の子供の死、という形で。
参考:ホメオパシーで娘を死なせたホメオパスに判決:忘却からの帰還


 ホメオパスホメオパシー団体の一部で近代医療や科学を忌避する主張が行われていることも見過ごせません。予防接種やステロイドを、諸悪の根源だと糾弾する団体もあります。
参考:喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー:NATROMの日記


 その主張は私のような素人から見ても穴だらけですが、信奉する療法の団体だから、と目を曇らされれば信じてしまうかも知れません。ステロイドは多くの患者を死の淵から掬い上げています。予防接種に関しては言うまでもありませんね。場合によっては、その主張は万単位の死者を生みかねません。
参考:反社会カルトとしてのホメオパシー:地下生活者の手遊び
 

 無論、多くの穏健な団体は、通常の医療を否定していません。繰り返しになりますが、より問題なのはホメオパシー自体ではなく、それを過信すること、です。
 

 

リンク集

 ホメオパシーについて、もっと詳しく知りたいと言う方のために、私みつどんが自信を持ってお薦めするサイトのリンク集を置いておきます。どのサイトも少なくともこのエントリーよりはあなたのお役に立つこと請け合いです。

ニセ科学ツアー_ホメオパシー: あぶすとらくつ
言わずと知れた、ハブハンさんの超おすすめサイト。ものすごく良くまとまってます。ほかのニセ科学ツアーも必見!

kikulog :ホメオパシー
 言わずと知れたⅡ(キリがないからⅡで止めとこう)、kikulogのホメオパシーエントリー。膨大なコメント群がものすごく参考になります。

「ホメオパシー」の検索動向を調べてみた | 鼬、キーボードを叩く
 地道な調査と豊富なリンク。海外情報も。

ホメオパシーFAQ:Skepticism is beautiful
 全部で五つのFAQ。ホメオパシー(とその批判活動)について、だいたいの疑問はこれでスッキリ解決!

ホメオパシー - Skeptic's Wiki
 Skeptic'sな Wikiホメオパシー項目。実に壮観。リンクも凄い。
 関係ないけど、いつの日かココに乗るようなエントリーをあげるのが夢だったりする。
 

  • 個別・具体的な批判

 百丁森の一軒家(本館): 驚愕!「K2シロップ代わりのレメディ」
 どらねこ日誌: 母子の健康と代替医療⑧
 助産院で広がりを見せているホメオパシーの危険性の一例。K2シロップというのは乳児ビタミンK欠乏症を防ぐ為に投与されるビタミン剤。怠ると最悪の場合、頭蓋内出血が起きるのだとか。


論拠行方不明な宣伝で売られるインフルエンザを予防すると称するホメオパシーレメディ:忘却からの帰還
B型肝炎ワクチンとホメオパシー:NATROMの日記
ホメオパシーはインフルエンザに効きません(追記あり5/6):kikulog
 各種伝染病とホメオパシー。どういう訳か、ワクチンを目の敵にしている団体がある。や、ぶっちゃけホメジャだけど。


お父さんの(そらまめ式)自閉症療育: ホメオパシーが自閉症を明確にターゲットにしています。
ホメオパシーと発達障害II−最近の情報:ベムのメモ帳
自閉症とホメオパシー(始める前に考えて!) - とらねこ日誌
自閉症にも手を伸ばすホメオパシー

 まだまだ沢山の人達がエントリーしていると思います。このリンク集は適時追加していこうと思いますので、時々覗きに来て下さいね。

2009/12/07追記

 自閉症に関して、表現を改めました。ブックマークコメントでの指摘によるものです(ありがたや)。bem21st さん、ありがとうございます。
 あと、ホルミシスの部分を削除しました。ブックマークコメントで指摘があり(ありがたやありがたや)、調べ直して書き直しているうちめんどくさくなってホメオパシーとの比較対象として不適当、と判断した為です。fireflysquidさん、mobanamaさん、ありがとうございます。
 皆様、おかしな所があったら遠慮無く御指摘下さい。

*1:砂糖玉に稀釈した液体を染み込ませて用いる事が多い為、レメディは砂糖玉と揶揄される事がある

*2:本当に彼が尊敬に値する合理的精神の持ち主であるなら、そも自分の主張が時代を超えてそのまま通用するとは考えないでしょう。ま、偉大でも尊敬に値する人間でもない私がとやかく言うつもりはないですが

*3:三省堂の辞書にそんな紹介があったらしい。身も蓋もない…

*4:中には怪しげな成分が添加される事もあるそうですが。ヒ素とか