ネタと釣りとマジレスと

 アンテナに釣り・マジレス関係のエントリーがフィッシュ!したので釣り上げてみます。

Interdisciplinary:詭弁者
妄想科學日報:釣れますか

先ずはInterdisciplinary様のエントリーから。全てはtittonさんのこのブクマから始まりました。

titton ゲームが「学業に専念できない」という意味で有害なのは確定的に明らか。その欠点を克服しない限り有害論は栄えるであろう。それはそうと良いデータベース

 私あたり(はてブや某匿名掲示板に詳しくないド素人的意味で)が普通に読むなら、このブクマの内容は「酷い」の一言です。TAKESANの

画面脳レベルのダメさですね、この人。何を的外れな事を言っているのか。

 この評価も不当なものではないでしょう。
 ただし。tittonさんによるとこのブクマは、ネタであるそうです。

 まさにそのフレーズで「これはネタだ」と宣言したつもりなんだけどねぇ。これって水伝批判の構図と同じだよね。水伝自身は「これは科学ではない」とはっきり言ってるのに、「いや、科学と言っている。科学でないものを科学というのはけしからん」と批判しているわけだ。

 え〜、何とも香ばしいコメント下半分部分についてですが、TAKESAN以外にもニセ科学批判を行っている方達からツッコミが入りまくっています。早い者勝ちではありませんが、NATROM先生が光速で反応なされたエントリーを一例として。

水伝が科学を自称していないって、本当かな?「水からの伝言」を出版している株式会社アイ・エイチ・エムのサイトを見に行ってみたよ*1。

波動と水を科学する 株式会社 I.H.M.

トップページに「波動と水を科学する」って書いてある。波動機器の歴史というページはもっとすごいよ*2。たとえばこんな具合。

もう一人は、アメリカでも有数の超心理学者であるディーン・ラディン博士です。博士は様々な意思のサイエンスに関わる実験を行ったことで紹介されていましたが、中でも江本勝  IHM総合研究所所長との合同実験である2,000人の祈りが水に与える影響の公開実験を行ったことで、その内容が紹介されていました。ここでも科学的な手順を守った実験を行い、水の氷結形状の評価については、一般人の投票によって評価するという客観性を持たせました。結果は、祈りの力が水の結晶構造を変える証明となったのです。

明らかに科学を自称してるよね。

強調も原文ママ。言うまでもないことですが、実験・観察は科学の基本的手法です。水伝の場合で言うなら、水の結晶が「ありがとう」等の言葉で変化した事が「実験によって確かめられた」という主張が、ニセ科学批判の俎上に上った原因であると私は考えています。これが「信仰によって結晶が変化する。ただし神を試すべきではない」という主張ならニセ科学批判の対象にはなり得ません。

本当に江本勝氏が、「水からの伝言はポエムだと思う。科学だとは思っていない」のであれば、自ら代表を務める株式会社アイ・エイチ・エムのサイトの不適切な記述を訂正すべきだ。

要するに、江本氏は二枚舌なだけ。疑似科学だと批判されたら、「いやいやこれはポエムですから。科学なんて自称していませんよ」と逃げつつ、一方では「科学的な手順を守った実験で証明されましたよ」と宣伝している。「水伝は科学を自称していないから疑似科学ではない」などという主張は、二枚舌の江本氏を利することになる。江本氏は「波動機器」と称する怪しげな機械を高値で販売しており、「機器」である以上、ポエムやファンタジーでは宣伝にならないことは、「水からの伝言」問題を追いかけている人なら知っている。

 こういったニセ科学の(そしてニセ科学批判の)背景は、ニセ科学批判・批判批判を行っている方だけでなく、もっと大勢の方と共有する必要があると考えます。なぜ(どんな利益があって)科学を騙り、どうして(どんなデメリットがあるから)それを批判しなければならないのか。ま、NATROM先生はじめ優れた論者が関連エントリーで言及なさっておいでなので、こんなエントリー読んでるヒマで興味がおありなのでしたらそちらを参照下さい。
 
 さて本題ですが、上記の「そのフレーズ」とは「確定的に明らか」と言う部分を指します。私は知らなかったんですが、どうもこの表現は「ブロント語」*1らしいです。某匿名掲示板発祥の、要するに「おかしな表現だとある程度周知された言葉」みたいですね。
 それを念頭に置いて読むと、なるほど、ネタ系ブクマに見えなくもないです。少なくとも、「後付だろそんな苦しいネタがあるかい!」 とは言い切れない程度にネタとして成立している。
 ですので、TAKESANの

*学業に専念できないとは具体的にどういう意味か。
*有害とはどういう意味か。
*確定的に明らかとはどういう意味で、根拠は何か。それは単なる主観か、実証的なデータに拠るものか。
*欠点を克服するとはどういう意味か。それは、ゲームによって「学業に専念できない」のを克服するという事だから、「ゲームによって学業に専念できる」のを指すのか。
*有害論が栄えているのが、そのゲームの欠点故なのか。
*その欠点とやらは、ゲーム特有のものなのか。

こういった反応を「ネタにマジレス」と言い張る主張するなら、それはまあその通り。
 問題は、それが全く問題じゃないことでしょうか。
 ネタにマジレスすることは、議論においては別に悪い事でも何でもありゃしません。具体的に批判の対象が明示されているのなら、(黙殺する自由を行使しないのであれば)それに答えればいいだけの話。もちろん、「ネタですた」で済ませても、それは「このブクマは(ネタなので)私の主張したいことではありません」という立派な返答になります。
 少なくとも

> 人が真剣に取り組んでいるものについて、ネタだのオチョクリだので訳の解らない事を言っているのを見れば、マジギレもする。

あなたはあなたの周りの人が星占いとか血液型判定とかの話題をちょっとでも出すと、その場でマジギレしてこういう拒絶反応をするの?だとしたらあなたの周りの人はきっとあなたを腫れ物を扱うように接しているんだろうね。きっとあなたは周囲から困ったちゃん扱いされているはず。

投稿: titton | 2009年1月19日 (月) 12:33

このようにマジレスした事そのものを揶揄(というレベルではないですが)する必要も、それを免責するものもありませんね。*2

 
 一方、マジレスが心底望まれるネタというものも存在します。
 妄想科學日報:釣れますか

釣り:物議を醸すものを発表し、それに対する反応を引き出した上で「すべては演出であった」と暴露することで全体の流れをひとつのエンターテインメントに変換してみせる手法。

釣りは本質的にエンターテインメントである。高度な計算と迫真性により観客を惹き付け、クライマックスでの暴露により驚愕させる。落胆と安堵と高揚がない混ぜになった不思議な充足感。ある意味ではインタラクティヴアートの極地と言っても良い。

 これを読むと、なんだかバーボンハウスがものすごく高尚な空間に見えてきますね。
 釣りにおいては真摯で熱い反応が尊ばれます。要するに、マジレス大歓迎
 ただ、「釣り」も極めるとなるとなかなか厳しいものがあるようです。

釣り師は釣りを予期されることまで考慮してネタ振りするなどの工夫により全体としての高度なメタネタを完成させてきた。その中には、敢えて怒りを誘うことでネタであることを忘れさせるなどの手法も含まれる。

しかし怒りを利用する手法は諸刃の剣である。怒らせるということは率直に言って不快にさせるということ。エンターテインメントとしてはマイナス状況であり、それを全部吹っ飛ばして笑いに変えるほどのオチを持たぬ限り失敗は必至となる。残るのは不快感を覚えた観客によるブーイングの嵐だ。

 以下、DocSeriさんは「『降臨賞』審査に対するクレーム」「神舟7号による軌道上での船外活動中継映像に対するでっち上げ疑惑」の例を出して、それぞれ「中2病」「自らの無知を誤魔化すための嘘」と切って捨てます。

ネタはネタとして昇華し切ってこそ意味がある。失敗すれば腐り悪臭を放つだけだ。

「釣り」道もそんなに甘いものでは無いらしいですね。


 最後に、実例を一つ。
 さだまさしで島おこし 対馬「防人の詩の島新法」超党派議連が提案bogusnews配信

国境の島・対馬で過疎化が進み危機的状況におかれている問題で、超党派の国会議員からなる「日本の領土を守るため行動する議員連盟」(山谷えり子会長)は14日の総会で、島おこしに歌手のさだまさしさんを活用した
防人の詩の島新法」
制定に向け具体的な作業に着手することを決めた。

 これを「釣り」と言っていいかどうか正直わかりませんが。
 取り敢えず、一瞬とはいえ信じてしまった自分が許せません


追記 2009/01/20 11:54
今気がついたんですが、NATROMの日記様へTBされているようです。見て貰えばおわかりかと思いますが、脚注に言及しただけだったのでTBしなかったんですが。はてなの自動TB機能でしょうか? まあ、なんて便利!じゃなくて。TB伝いに来て頂いた方に申し訳ないんで、NATROM様のエントリー内容をもう少し詳しく取り上げようかと思います。現在作成中ですのでもうしばらくお待ち下さい。

追記 2009/01/20 13:43
脚注に大幅加筆し、本文としました。ふう。

*1:詳細はコチラこう言う方は見ている分には面白いですが、隣にいたらチョット……。

*2:この辺の話は思索の海様のコチラのエントリーを参照にしました。しかし皆さん反応が早いですね。