がんばって読んでみた。〜偏差値25からの英語論文翻訳〜

 と言っても、翻訳サイト丸投げですが。
 前回の続き。今回は、実際に翻訳する上で必要な「コツ」について追求してみたいと思います。

力のいれ所を探る

 翻訳サイトや前回ご紹介したソフトを使用するにしたって、全文をそのまま翻訳したんでは途中で気力が尽きてしまいます。気合いは有限です。気合いを大切にね?
 では、何所に注力し、何所は手を抜くか。先ずは中見出しを翻訳してしまいましょう。 前回に引き続き*1HOMEOPATHY AND SCIENCE: A CLOSER LOOKを例に挙げます。

 Introduction:序論
 History:歴史
 The Physics of Homeopathyホメオパシーの物理
 In Vitro Studies:生体外研究(試験管内の研究)
 Reviews and Meta-Analyses:レビューおよびメタ分析
 Is homeopathy safe?ホメオパシーは金庫安全ですか?
 Ethics:倫理
 Discussion:議論
 References

 この論文は上の九つの項目から成り立っています。
 さて。論文は「序論・本論・結論」の構成になっている、と遙か昔国語で習いませんでしたか?*2実際にはもう一つ、必ず付いてくる(そして国語の問題には絶対に付いてこない)項目があります。最後の「References:参照(文献)」の部分です。
 ここは論文を評価する上でかなり重要な部分で、何もないのは論外、トンデモで埋まっていたら、トンデモの研究、でなければトンデモ研究です。
 気合い翻訳する上でもこの部分は重要で、なんてったってこの部分、やたら長い(上記論文で全体のおよそ4分の1)上に翻訳する必要がないからです。いや、本当はあるんですよ?でも、正直言って気合いで何とかしようとか考えてる私のレベルじゃ、有名どころでもなければ外国の文献なんて評価は出来ませんどうせ。ミスリードするのがオチです。
 なので。ココは思い切って切りましょう。これで労せずして4分の3程になりました。
 

 所で、科学論文において最も大切な部分は何所でしょうか? 一見、結論部分こそ重要に思われるかも知れませんが、最も重要な部分は本論、それも論拠となる理論や実験デザインの詳細、です。だzって、そこさえ分かれば追試験できますから
 当然、翻訳する際にもそこがキモとなります。キモだけにグラフや表が貼ってあって数字が多くなりがちなので、何となく「ココがキモ」と分かるものです。ビリーブフォース。必要なのは気合いです
 とは言え。事前に論文のテーマが分かればそれに越した事はありませんね。序論(Introduction)は最初に全文翻訳してしまいましょう。そこにその論文のテーマが書かれています。大丈夫、理系の人はそんな所に凝らないから簡潔にまとめてあるから大した負担にはなりません。もっとも、人文系でやたら長い&難解な序論、と言うのもなくはないですが、そう言う論文は本文を読んでもどうせ理解できないので丸めて紙ゴミに出してしまいましょう*3
 テーマが分かれば、自ずと論文の構成も判明します。前回最後に序論を翻訳しましたが、この論文は「現時点でのホメオパシー研究、特にその薬効を評価する」のがテーマです。つまり、キモとして怪しいのは物理から「Is homeopathy safe?」まで。この皮肉な感じが、実に怪しいです。
 軽く翻訳して確かめると、この後の項目、倫理・ディスカッションは、ホメオパシーに効果がない事が前提となっているのがすぐに分かります。つまり、safe?までで結論は出ていると言う事です。残りはその結果を敷衍した補足的項目、と言った所でしょうか。
 この段階で翻訳すべき項目をホメオパシーの物理からの4つに絞れます。半減です。

専門用語はグーグル先生&他の人に聞く

 ところで。翻訳した中見出しに見慣れない言葉があったのではないでしょうか。
 In Vitro Studies:生体外研究(試験管内の研究)
 Reviews and Meta-Analyses:レビューおよびメタ分析
 生体外研究もいい加減イミフかと思いますが、Meta-Analysesに至ってはエキサイト翻訳だと「メタアナリシス」とか翻訳しやがります。まあ、メタ分析といきなり言われても、何それ?な方は多いのではないでしょうか。
 そう言う時には、黙ってググレカスグーグル先生に聞きましょう。言葉の後ろに「とは」を付けるんですよ?

in vitroとは、直訳すると「試験管内」。 試験管等の中で、ヒトや動物の組織を用いて、生体の体内と同様の環境を人工的に作って、薬物の反応や減少(代謝)をみる試験です。


in vitroとin vivoとは? - GMPとは?

 要するに「コントロールされた状況」と言う意味みたいですね。人体をはじめ生体内の環境は不安定で千差万別、色々と要素がありすぎて適切な対照を取る事がなかなかに難しいです。そこで要素を揃えたIn Vitroな研究が必要とされます。


 メタアナリシスの説明はちょっとやっかいです。

メタ・アナリシスとはいくつかの研究結果(データ)を統合してeffect size("効果の大きさ"または"効果量"ともいいます)を推定する統計学の手法の1つです。


http://shiriuskun.srv7.biz/meta_analysis/kisoyougo.htm

 何だか分かったような分からないような……。
 こんな時こそ、ブログの出番です。サイドバーにある「みつどんのアンテナ」には右上の方に「ニセ科学対策」というグループが設定されています。ココには選りすぐった(目に付いた先から片っ端という説もある。)日本を代表する53のそれっぽいブログが収められています。大抵の事は、この人達が詳細に解説してくれています。アリガタヤ。
 幸い、ぷろどおむ えあらいん様がドンピシャなエントリーを上げていらっしゃいました。

疫学が対象とする分野は原因と結果が多対多の関係を持つ複雑でマクロな事象であるにもかかわらず,実際に研究を進める上ではこのような足かせが生じてしまうため,どうしても一つの研究だけで因果関係を導き出すのは困難となります。そのため,良くできた研究でも相関関係を見いだすのが精一杯となることが多いです。そして,そのような状況を打破するための解決策として用いられ,磨かれてきた手法が「メタ・アナリシス」と呼ばれる方法論です。

「メタ・アナリシス」は,過去に行われた複数の研究を統合し,それらの研究成果全体を統計的に解析することで,より確からしい因果関係を導き出すことを目的とする手法です。


もちろん,その手法の中には「その研究を統合することが適切かどうか」という判定基準も含まれ,国際的な合意ルールも存在しています


メタ・アナリシスはなぜ必要なのか

 ぐっと分かりやすいですね。
 他にも分からない事・ニセ科学関係で迷っている事がありましたら、サイドバーよりアンテナや「ニセ科学対策リンク」を活用下さい(大宣伝)。

がんばって読んでみた。

 では、件の論文を気合い翻訳してみましょう。一応断っておきますが概説な上意訳が入ってます。

ホメオパシーを科学の目で検証する。 

  • 作用機序:レメディが身体的・生物学的な作用を及ぼす機序は判明していない。提出された仮説は、いずれも既知の科学に則っていない。「ハーネマンが正しかった場合、私たちの科学および私たちの思考の基礎は無意味です。一方彼が間違っていた場合、その教えることは無意味です」
  • 生体外研究:in vitroな結果が出た、と主張したホメオパシー側の主張は再現できなかった。「実際、レメディの生体外の影響を示すただ一つの研究は、同じ研究所から来ます。」
  • メタ・アナリシス:所謂「出版バイアス」が強く示唆される。「奇妙にも、ホメオパシーの支持者には有効性に関する有力な証拠がない事は無関係であるかもしれません。 ある主要なホメオパシー支持者は、科学的研究によるホメオパシーの有効性は重要でなく、その個人的な経験が慎重に制御されたどんな数の研究よりも重要である、と断言します。」
  • 有害性:幾つか副作用が見られるものの、大半のレメディは安全。ただし、予防接種を忌避しホメオパシー医の助言に従ってマラリアの「処置」を行い、旅行先で感染したケースが見られる。「予防接種はおそらく人間の歴史で唯一成功した公衆衛生処置」。
  • 結論:その有効性が証明されたホメオパシー療法は存在しない。「倫理ある医師・獣医師は患者を治療する前に、その治療法の効能と安全性の両方の信頼できる証拠を要求します。したがって、疑問は残ります――ホメオパシーが安全で有効なら、提唱者はなぜ、必要な治験および研究を行う事に気が進みませんでしたか?それとも、できなかったのか。」

 以上。答え合わせ等、後はpollyannaさん*4にお任せします。

*1:実は、超迂闊な事に前回引用先を明らかにしてなかった事に気が付きました。直しましたが、訴えられて高額の賠償金を請求されたらどうしましょう?

*2:勿論、私は平成生まれのゆとり世代です。気持ちは。

*3:べ、べつに昔そんな論文に引っかかってレジュメをゼミで批判されたとか、そんなんじゃないんだからっ。

*4:敢えてさん付けで。ここで先生を絶ち切っておかないと、以後「大先生」言う度に脚注でネタを考えなければいけないので。……そうだよ、何も思い付かなかったよ。ネタ切れだよ。これは逆ギレだよ。大体、同じはてな村民だからってなぁ、みんながみんなマダム――はっ、私は今何を……