埼玉で一番マズイラーメン屋

 おせちの買い出しに、久しぶりに以前住んでいた川口へ行きました。自転車では結構な距離で、このクソ寒い(まあ、今日は暖かでしたが)忙しい時にそんな遠出はしたくなかったんですが、近場では手に入らない料理がありまして。ほら、佃煮なんだけどなんて言うんでしたっけ、雀焼き? それにハゼの甘露煮? あと鬼殻焼きと田作り。市販品で済ませば簡単なんですが、これが変に甘くてどうにもおいしくない。田作り以外は自分で作るのも難しいし。
 昔は卸が年末だけ開催している年末バーゲンの佃煮専門店で買ってたんです。そこが閉鎖されてからはまさに東奔西走、おいしい佃煮求めて半分意地で探しまくってたんですが見つからず。そもそも扱っている所がほとんどないし。で、あきらめかけたその時ふと立ち寄った近所の魚屋が「エウレーカー!」幸せは、こんなに近くにあったんだねチルチル。
 そんなリアル青い鳥体験もあって、まあおせちそのものが半ば呪術的料理ですので、思い入れの命ずるままに転居して遠方となった今でも年末はその魚屋に行ってたんですが。
 今日一年ぶりに行ってみると、閉店、どころか更地になっていまして。トロ箱だけがぽつんと。
 シャッター街とは言ったもので、川口位な大都会でも、駅前こそ繁盛してますがほんの一歩外に向かえば結構、シャッターが目立ちます。昔利用していた専門店は軒並みやられているかコンビニ。ま、私自身川口時代は魚はスーパーで買ってましたし。潰れること自体は仕方ないかな、という感じなんですが。青い鳥も不況には勝てないようです。
 
 ただ、一つ納得いかないことがあって。と言うわけで、お待たせしました本題です。
 川口時代、近所も近所、すぐ目の前に来○軒というラーメン屋があってですね。ここは、あなたがご存じのどのラーメン屋よりも、色んな意味でマズイです。
 先ず味ですが、「味覚は人それぞれ、私の好みで言うなら、ん〜、ちょっと、って感じカナ?」的な甘っちょろいレベルでないことは保証します。不味です。インスタントの方がまし? そんなの当たり前ですよ、だってインスタントラーメンは食えるでしょう?
 昔ここで出前を取った時、お店が「味噌ラーメン」と言い張った代物はすごかったですよ。デロデロにのびた麺と味噌汁が融合した味で、仕上げにたっぷりと化学調味料。でも、そんなのはいいんです。丼を覗き込むとなにやら長細い緑の物体が。何だこりゃ、ニラか?せめて切れよな、と持ち上げてみると、これがワケギですよ。根っこが付いたままのノーカットなワケギが3本、横たわっていて、それが具なんです。他には? 底の方にもやしが沈んでましたねそういや2本。
 すごいでしょ? でもね。そんなことは問題じゃなかったんです
 いろいろと大人な事情が重なり、その店で食事をとらなければならなくなったことがありました。店内は真昼なのに薄暗く*1、壁に手書きのメニュー、本棚には聖闘士星矢が表紙のジャンプが、と想像を裏切らないつくりです。カウンターの上には布巾に並べられた塗り箸が並んでまあエコロジー。でも、塗り箸だと思っていたのがかもされた割り箸だと気付いた瞬間、本日の目標が「必ず生きて帰る」に変更されました。よく見れば、カウンターから器から、全てが黒ずんでいます。
 とにかく、メニューです。あの時ほど真剣にメニューを検討した事はありません。なにしろ命がかかっています。とりあえず、店主の前でぐつぐついってる「命のスープ」がなにやら緑色で、どう見ても本当に命が発生しています。麺類はNGです。
 頭を振り絞って出した答えが「コロッケ定食」。我ながら実にクレバーな選択です。冷凍コロッケがチンされて半生で出てきた所で死にはしません。死にたくはなるでしょうが
 所が、渾身のオーダーは通らなかったんですよ。時間外だとかで。皆様ならどうしますか。
 私は、いや、あのときの自分をほめてやりたいですね。
 決断しましたよ、チャーハン、と。
 火が通ってれば大丈夫。多少アレンジが加わっても、そこはチャーハンどうせみじん切りです。鼻つまんで飲み込めばいい。
 注文すると、お釜からご飯をすくい、中華なべの中へって、おい、今なべ洗わなかったろ! …もういいです。これがエコでロハスなんですきっと。意外と手際よくなべを振っております。宙に舞う白い飯。あの……具は? シンプルがこの店のスタイルのようです。
 待つ事しばし。来ましたよチャーハンが。
 スープつきで
 ……そう来たかorz
 私、出されたものは残さず食べるクチです。
 チャーハンは、意外と普通に不味かったです。チャーハンをどうやったらあんなに不味く作れるのか。逆にすごいです。具は、単に見落としていただけで、ちゃんと入ってましたネギが。
 問題のスープですが。あの、これ…ハッカの味がするんですけど
 なんとか完食しました。今はその事を誇りに思います。

 
 さて、何が言いたいかというと。どうしてこんな店が潰れないんだよ!?
 繁盛しているとは言いがたいですが、気がつくと人が入っております。
 時々、メーターが上がってしまった人の叫びが聞こえます。どうやら、近所の酔っ払いおじ様たちの憩いの場になっているようです。なるほど。アルコール消毒か。
 ちなみに、店主は小太りのおばちゃんです。母に聞いたところこの店、旦那が切り盛りしていたときは普通だったらしいです。亡くなった後、お店にノータッチだった奥さんが跡を継いだ、とか。いや、いい話ですねぇ。ここじゃないどこかなら。
 現在、来○軒はたいそう立派な新店舗にリニューアルしました。
 世の中絶対間違ってます。

*1:これは改装前。今は違うと思います多分